「愛してます」
「・・・・・・ほぉ」
「愛してます」
「はぁ?」
「愛してます」
「おいおい」
「愛して・・・・・・」
「五月蠅い!」
とうとうゴウトがきれた。
毎日毎日、起き抜けに、食事中に、捜査中に所構わず、ライドウが囁いてくる。
初めは子供の気まぐれと思い、のらりくらりと流していたゴウトだったが、どうやらライドウは本気で告白していたらしく、回を重ねるごとに視線が熱っぽくなっていった。
スキンシップと称して、毛皮をもふってくるし、舐めるし、果てはいかがわしい場所に接吻けしようとする。
俺は猫、いやいや今は猫の姿だが、この身体になって初めての貞操の危機だ。
「二度と云うな!」
「ゴウトは僕がきらいか?」
「云い過ぎなんだよ! ねこじゃらしと併せて禁止! 絶対禁止!」
食べ過ぎと同じように、云い過ぎもよくないってことをわからせないといけない。
過ぎた行為は、身を滅ぼすぜ。
「・・・・・・もう一回云えば、きりのいい数字になったのに」
唇を尖らせていじける十四代目に、ゴウトは、やれやれと溜息を吐く。
「ったく。999回もよく云ったもんだな」
「・・・・・・ゴウト」
「ん?」
「もしかして数えてたの?」
しまったと思った時には、遅かった。
ぎゅうと抱きしめられ、頬擦りされる。
「嗚呼、ゴウト」
「五月蠅い」
「1000回目は、ゴウトが云って」
「厭だ」
「できれば寝台で云って欲しいんだけど」
「黙れ」
ゴウトは伸び上がり、ライドウの唇を自分のそれで塞いだ。
1000回目の愛してるは、二つの唇から。
2006.7.23
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