「雷堂。珈琲」
「鳴海」
「ん?」
口に含むと、雷堂がニヤリと笑った。
「その珈琲は、毒入りだぞ」
鳴海は、少し目を丸くして・・・・・・そのまま嚥下した。
「莫迦か貴様は!」
「お前が毒を入れるとは思わねーし」
珈琲の粉が入ってたぜ、と舌を出してみる。
「万が一入れたとしても、お前、苦しそうな俺を見たら、解毒しようとするだろ?」
「『絶対』は、ないぞ」
「まあな。でも……、あわよくば、口移しで解毒剤が飲めるかもしれないだろ?」
「は!?」
「雷堂からの初めてのチュウ」
鳴海は、悪戯っぽく笑う。
「ちょっと命賭けてみたくならない?」
「……今すぐ殺してやろうか」
「やだよ」
「『仮に』我が貴様を解毒したとしても、仲魔の力でやるから、破廉恥なことは絶対にしないぞ」
「えー。じゃあ百歩譲って美女の仲魔を呼んでよ」
「断る」
「じゃあ薬飲ませて」
「薬代がもったいない」
「かー!? 愛が足りないよ雷堂ちゃん!」
「そのようなものは皆無だから問題ない」
さっさとカップを下げようとした雷堂の腕を引っ張った。
「じゃあ金子がかからなくて、今すぐできる治療をしてよ」
「は・・・・・・?」
不快に染まる書生の顔に愉悦を感じる。
「青臭い妙薬は今度でいいから」
鳴海は、両手がふさがった書生をいいことに、襟元を引き寄せて。
「今日は、これで勘弁してやるよ」
逸らされて、噛みつくことができたのは、白い喉仏だった。
2007.2.12
|