紅讃歌





 異界から戻ると、帝都も闇を迎えていた。
「最終便でちゃってるよねぇ」
「・・・・・・歩きましょう」
 月に照らされた線路の上を、二人の影が這う。
 じゃりじゃりと音をたてる無邪気さと、数刻前の激情は、どちらも同じ夜に起こっている。

 銀座に現れた赤マントを倒し、一つの事件は収束を迎えた。
 しかし、それは苦さも含んでいて手放しで喜べるものではなかった。
 ライドウも手酷い傷を負い、仲魔も完全回復できるほどの力は残っておらず、擦過傷が白い肌に目立つ。
 滲む紅にたまらない気持ちになって、鳴海は手で触れていた。
「・・・・・・っ、鳴海さん?」
 驚いて立ち止まるライドウに、鳴海も歩を止める。
「あ、悪い」
 そう云いながらも鳴海は肌をなぞる手を止められないでいた。
 うなじ、耳、頬、鼻を通って・・・・・・唇。
 紅をひくようにたどると、ライドウは身を捩ったが、鳴海は身体ごと包み込んだ。
「・・・・・・ライドウ」
「鳴海、さん」
「ありがとう。またお前に助けられたよ」
「いえ・・・・・・」
 立ちすくむライドウに、鳴海は愛しくなって腕に力を込める。
「お前が無事でよかった」
「・・・・・・鳴海さんも」
 もたれかかってきたライドウに気をよくし、鳴海はライドウの髪を指に絡める。

「ライドウ」
「はい」
「一緒にやってほしいことがあるんだけど・・・・・・」
 そう云うと、いきなり鳴海は助手を柔道の要領で押し倒し、組み敷いた。
「・・・・・・あの、鳴海さん?」
「ライドウ。今日はここで野宿しない?」
「事務所まで、そう遠くはありませんが・・・・・・」
 押さえ込まれて動けないライドウをいいことに、鳴海は擦り傷を、つっとなぞる。
 びくっと跳ねるライドウに、ニヤリと笑ってみせる。
「でもさ、休んだ方がいいと思うんだよね」
「傷なら大丈夫ですよ」
「ん~それもあるんだけど、さ」
 鳴海は淑女にするように、ライドウの手の甲に口づける。

「ライドウ」

 指先をねっとり舐める。

「ライドウ」

 音をたてて吸う。

「ライドウ・・・・・・」

「鳴海さん! やめて下さい!」
「なんで? ライドウだって十分やるきみたいだけど?」
「・・・・・・あっ!」
 やわやわと揉んでやれば、そこはすぐに反応した。
「戦闘の後だしね。自然なことだよ」
「でも、こんなところで」
「線路が気になる? それとも悪魔の視線、かな?」
「両方です。それに」
 一生懸命理由を述べる書生に、鳴海はなんだかいけない気持ちになった。
「ラ~イド~ウちゃん」
 鳴海は、可愛い反論ごと舌を吸い、絡ませた。





 薄く血の滲む箇所を舐めあげると、ひくりと跳ねる。
 上着は着たまま、白い足を余すことなく、さらして。
「やらしいね」
 ライドウの両足を抱え、ゆっくりと挿入する。
 あせらず、ライドウの調子にあわせるつもりだったが、あまりに苦しそうな表情をするので、鳴海は一気に貫いた。
「あぁっ・・・・・・!」
「ライドウ・・・・・・」
 鳴海は優しく双球を揉み、荒い息を整えさせる。
「大丈夫だよ。俺にまかせて」
「・・・・・・ん、あっ」
 緩く揺すれば、青ざめた頬に赤みが戻ってきた。


 ライドウの古傷が、治癒できなかった箇所とは別の薄紅に染まる。
 心なしか、ライドウもその場所が弱いようだ。
 鳴海は咲く前の花びらを色づかせるため、身体をうねらせ口づけを落としていく。
 鳴海の手に、舌に、紅が咲いていく。
「傷痕は残らないほうがいいけど・・・・・・俺は、これが愛しいよ」
「・・・・・・でも」
 目をふせるライドウに、鳴海は包み込むような囁きを送る。
「命を奪うことが必ずしも正しいとは思わないよ。でも、これはおまえが生きてきた証拠だ。
 ・・・・・・難しい問題だけど、それを見られて、お前に会えて俺は嬉しい

 ライドウは、何も応えなかった。
 ただ、顔を隠すようにして抱きついてきてくれて・・・・・・鳴海は、じんわりと胸が熱くなった。

 その熱のままに、共に紅く染まっていく。








意識を飛ばした想い人に、鳴海は呟く。

「いつでもいいから・・・・・・使命が終わったら、帰ってこいよ」

 そっと髪を撫でながら。


 たとえライドウがどんなに遠くへ赴いても、鳴海は待っているだろう。
 陽を背に、独りの夜に耐えながら。
 それが、唯一鳴海にできるライドウへの、
 悪魔とは戦えない鳴海の、せめてもの愛情表現。
 闇の中で、ライドウに向かう光源になればいいと、願って。
 それすら力になれないかもしれないと・・・・・・照らし続けながら。



 ライドウの前を最終便が通り過ぎていっても・・・・・・


 線路の先に、俺がいるから。











 ただ、俺の元へ戻ってきたときは、またあの花を見せてくれ。

 白土に咲く、紅い花を。
















 鳴ライいかがだったでしょうか。
 実は、鬼畜な鳴海さんも書いたんですが、先にこちらを出しました!
 まぁ包容力のある(?)大人との駈け引きということで、ちょっとは甘くね!
 鳴海さんオヤジくさくなっちゃったけど(笑)

 事務所に戻ると、いっつも座っている鳴海さん。昼間はライドウちゃんを待っているの? 待っているのですかー!? とゲーム中、ニヤニヤしてたのは内緒です♪ 
「紅讃歌」の終わりがあんな展開になったのも、貞淑な妻よろしく鳴海さんが「あなたの帰りをお待ち申し上げます」な発言をしたのもそこから来ています(と、ここで説明・泣)

 ・・・・・・こんな風に理解してくれる人も必要だろうなぁと思うんですが、う、うまく書けませんでした。ぐはっ! 

 エロ部屋やしのぉ・・・・・・あ、でも今回あんまりエロくないや。素敵要素をことごとく微妙にしちゃいましたよ(それが微エロの正体か! 微妙エロ。本来の微エロの意味とは違うはず)
 所長は諦観があるので雷堂さんほど、私の中ではじけてくれません! でも大人しく独りで寝室に籠もるとも思えないよ所長。夜は、どこかふらついてそう(笑)大人ですからね★

 ゲーム第弐話のクライマックスは、管理人の(!)ライドウさんも満身創痍でした。狭いっすよあのフィールド! 行けると思って画面端まで走っていけば、その場足踏みになるし!
 ぐ・お・お! 赤マントめ! 今にも「Hey Yoh!」とか言いそうな面白外見してるのに!(逆恨み)
 まぁしかし、ライドウさんは帰りは鳴海さんと一緒ですよね♪ と妄想できたわけだから、痛み分けでしょうか(笑)
 

 読了ありがとうございました!


                                        2006.5.26