どうせ騙されるのなら。君の・・・・・・に。








 始まりに言葉が必要なわけではない。
 今も、不意に訪れた沈黙を埋めるように細い手首を引き寄せただけだ。
 溜息のように漏れた互いの名は、絡めた舌の上で弾けて消えた。
 
 慣れているのか全くの童貞なのか。
 誘うような色香を醸し出したかと思えば、少年は恥じらうように顔を背ける。
 それを許さず蹂躙すれば、軽く歯をたててくるから達が悪い。

「ライドウ、自分で開いて見せてよ」
「他の人にもそう云っているのですか、鳴海さん」
「まさか。こんなことをするのはお前だけだよ」
「・・・・・・」
 伏せた睫毛を僅かに震わせながら、ゆっくりとライドウは鳴海に深奥を明かす。
 揺れる瞳は澄んでいるのに、手管は玄人。
 食らいつき、蜜を吸えばあえかな喘ぎが・・・・・・。

「鳴海、さん」
「ん?」
「もう・・・・・・」
「ねだってごらん」
 堰き止めると、震えた後に唇が開いた。
 か弱い声音に、名前を囁かれたのか告白されたのかわからなかったが、そのアンバランスさがいいと思い、鳴海はライドウを満たしてやる。
 
 ―――極上の気持ちよさだ。

 変則的に攻めれば、助手の身体もこちらを絞る。
 


 支配しているようで、征服されているのは鳴海の方なのか。
 
 保護と監視をしているつもりで、背後から銃を突きつけているのはライドウの方なのか。

 愛を紡ぐ肉の共鳴で、寝首を掻くのはどちらが先か。

 甘やかな時間は、いつ壊れるのだろう。


 背筋を背徳という快楽が貫いていく。


 

「出すよ」
 一応の了解を取り、鳴海はぐいと腰を突き出す。
 併せて鳴海にしがみつき、爪を立てたライドウにぞくりとした。
 その瞬間、

 鳴海の内耳に、笑いの混じった喘ぎが注ぎ込まれた。



 ―――こいつ!

 

 突き放そうとした鳴海に、白い手が緩やかに絡みついた。

「僕から逃げられると思いましたか?」

 萎えた鳴海を一瞬にして快楽に引きずり込んだライドウは、矛盾した笑みを浮かべた。
 清廉にして、妖艶な・・・・・・。
 




「ライドウ・・・・・・急に微笑むのは反則でしょ」
「そうですか?」
「若者より早いなんてプライドが許さないよ」
「・・・・・・」


 ライドウは吐き出されたものを、舐めた。
 凄絶な笑みに、鳴海は理性が騙された原因を苦く悟ったのだった。
 













 当初の予定とオチが変わりました。ライ鳴ような鳴ライをお届けします。
 もっとほの暗い雰囲気で終わる予定だったのですが、脳内エロ神さまが、エロで終われと指令を出してきたもので(笑)でもいつものようにエロくない(泣)
 
 題名は嵐が丘ですが、すみませんきちんと読んだことはありません(な)
 小悪魔ライドウちゃんと大人な悪魔鳴海さんの愛と憎しみを書きたかったのかも(笑)ま、鳴海さんはMだと思います(オイ!)


 読了ありがとうございました(云い逃げ!)


                                         2006.6.18