「ライドウ、気をつけてな」

笑顔で手を振る上司に、違和感を感じた。
「鳴海さん」
すっと手を出す。
「いえ、握手ではなくて」
「えー、じゃあ何」
「調査には先立つものが必要です」
「ん~、が・ん・ば・れ!」
ぐっと拳を突き出す上司。
隣でゴウトが「阿呆だな」と出て行く。
「ください」
「ないもん」
袖を振り、自慢の机に頬杖をついて、ないないとアピールする上司。
「・・・・・・わかりました」
「そうそう。切り替えが大切よ~」
「もらえるだけもらいます」
「え?」
スーツの内側に、するすると手を滑らせる。
びっくりして、瞬きを忘れている瞳を丸ごと頂く。
引き寄せたタイが音をたてた。
「ラ、イドウ・・・」
舌が、唇を叩いてくる。
返事する前に、ぱっと離れた。
「ーーーもういらないのか?」
鳴海は、ちろりと舐める仕草。
「今は、」
ぞくりと背筋に走るものを無視して、どうにか無表情で云う。
「これだけで勘弁してさしあげます」
「あー!? 俺のへそくり!」
「確かに頂きました」
ぴっと指先に挟んだ二枚の紙切れを、自分の懐にしまう。
「ライドウの鬼、悪魔~、憲兵~」
「・・・・・・」
あまりにも情けない声で云うので、

「神ですら僕の虜ですから」

優しく微笑み、髪に接吻けた。

「・・・・・・でもね」

不意にぶれる視界。

「大人は、ずっとずっと、ずるいんだよ」

真上から、濡れた瞳が迫ってくる。
背にあたった机と鳴海の重みで、胸が苦しい。
釦と釦の間から、ぞくりとする指が触れてくる。

「だからさぁ・・・俺よりずるくなったら、あげるよ」

身をくねらた二枚の魚は、狡猾な手に釣り上げられて。
溺れるように動かしたライドウの足は、濁流に諍えず、呑まれていった。





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事務所の家計はシビアです。
超力兵団の時はお小遣いくれたのに、アバドンの序盤ではくれなかったので小咄にしたのでした!
お金の恨みは根深いわい。
だって金王屋ったら「あいにく手持ちがなくてのう」とか云うから、私、
今作では店レベル上げないと物売れないと思ってたわけで。
ひたすら異界にかつあげしにいってのう。<それ逆恨み

最後のオチですが、上半身でパンチみまってたらおもろいなと思ったのは内緒です。
報われない所長やバイオレンスなライ様も好きなので(笑)
ま、エロスでいいか~<どっちだ



                                 2008.12.11