暁風が煌めきながら吹く頃に。
 吹き飛ばされた闇が、隠れるようにビルディングの陰に溶け込んだ。
 その瞬間ごつっと鈍い音がして、陰ーーー鳴海は、怒鳴りつけた。
「莫迦野郎! 気をつけろ!」
「ぶつかってきたのは、貴様が先だろう・・・・・・」
 冷静に事を分析する相手を視認し、鳴海は階段の途中で止まった。
「雷堂。教えておいてやる。人生、云った者勝ちだ!」
「我の意見は無視か」
「年長者を敬い給え」
「少年老いやすく学成りがたし」
「か・わ・い・く・なーい!」
「お、おい」
「此処は可愛いのに」
「莫迦が、放せ!」
「やだ。無理。可愛いし」
 腰にへばりついた妖怪もどきに、雷堂は・・・・・・。



 荒っぽくベッドに鳴海を放り込んで、雷堂も仮眠をとった。
 次に起きた時は、学校に行く時間だった。
「たんこぶ〜」
 恨み節が、背後から聞こえてきた。
「たんこぶ出来たんですけど〜」
「よい教訓になっただろう」
「全然」
「・・・・・・兎に角。今後、外で絡んでくるのは、やめてくれ」
 町中であのような奇行をされたら、それこそ目もあてられない。
 人目に触れれば、恥辱と妙な噂の為に守護の為の調査が不十分になってしまうかもしれないし、
 いや、人気がないと余計行為が激しくなるから困るが・・・・・・。
 辱めを受けた記憶が次々と頭中を遅い、雷堂は咳をして何とか誤魔化した。
「夜遊びは、ほどほどにするのだな」
「俺はただ遊んでるわけじゃないよ」
 ぴたりと背中に張り付いてきた主に、ぞくっとした。
「大人が本気になって遊んだら、それは仕事になるの」
 雷堂は、絡まる腕を解き、外套を着た。
 お調子者の唇で、老獪な秘密を囁く鳴海が、未だにわからない。
 どこまでが本気なのか。そもそも本心などあるのか。
 気に病んでも仕方ない、と気づいたのは最近のことで。
 それでも一々過敏に反応してしまう我は未熟だと思う。

「学校?」
「嗚呼」
「鞄かしてあげよっか?」
「いや、いい」
「んー・・・・・・」
「まだ何かあるのか?」
「あのさ・・・・・・」

 急に真っ暗になって視界に、戸惑った瞬間、雷堂は床に転がされていた。
 帽子を下げられたのか、と気づいたのは、既に拘束された後で。


「さっきの続き、しよ」

 出席日数が・・・・・・! と、叫ぼうと動かした舌は、差し込まれたぬめりに阻まれて。
 
 飽くことなく白濁を擦りつけてくる鳴海に、いつしかそれすら興奮を覚えて。
 授業時間は、全て、腰を振ることになってしまったのだった。
 

「な。本気になったら凄いだろ?」




 今期もまた、此の男の為に、補修を受けるはめになる・・・・・・。
 
 












2008.1.08