星々ですら、船を漕ぎそうに穏やかな夜。
 淡く光る美しい闇の中で、唯一、悲嘆にくれる者がいる。

 といっても、当人は寝入っていて、夢の住人なのだが。
 ゴウトゴウトと泣きじゃくるライドウに、鳴海は今夜も、大丈夫だよと背をさすってやる。
 
 寂しいの? と云えば、弱弱しく頷き。
 辛いの? と問えば、緩く喘ぐ。

 十四代目を辞める? と囁けば、いやいやと更に泣く。

 鳴海は、震える手を背に回させ、自分も抱きしめる。


 だったら、もっと泣きなさい。
 もっと寂しがって縋りなさい。


 星が見えなくなるまで、ずっと傍にいてあげるから。



 ゴウト、と縋ってくるライドウの瞼を、ぺろりと舐めたのだった。














                                   2006.12.01