「雷堂、此れやっといて」
「其れお願い」
「彼れ取って」
「・・・・・・彼れではわからん」
憮然としながらも鳴海の意図する物をきちんと渡して、雷堂は踵を返す。
「っ、ありがと」
噛み殺せない笑い声が、空気に跳ねる。
「たまには自分でやれ」
「厭」
「我がいつも要望を聞くと思うな」
「でも、俺のことを放っておけないでしょ」
「・・・・・・お前など何こかへ行ってしまえ」
「はははっ」
益々弾む音に、雷堂は唇をへの字に歪め、少しだけ赤面した。
此奴に赦しを請わせたい。
這い蹲らせて散々なじり、泣かせ、雑事をやらせた後、許すふりをして、何こか彼方へ放り捨ててやりたい。
「其れができないから、雷堂ちゃんなんだよねぇ」
「貴様、我の思考が読めるのか!?」
「全てお見通しよ」
貌に出てるしね、と其方の貌は余裕の笑み。
頬が加速度的に染まっていく。
「ど、何こを触っている!?」
「気持ちいいとこ」
「嗚、呼、其こは駄目だ」
「じゃあ、いつもの此れ、しよう」
指示の果て、こそあどの表と裏は、壱つのみ。
此、其、彼、何→こ、そ、あ、ど、と漢字を辿る仕組みになっています。
それを引っ繰り返して、後半では、何、彼(嗚呼)、其、此と続き、終着。
裏返っても表でも、二人がやることと、一つになることは同じよね、という末文でしたv
くっ・・・・・・こういうのを遊びで書いてみたかったとは言え、滑ったネタを説明する漫才師の気持ちになる・・・・・・。 ぐぐぐ(泣)
蛇足ながら我も「あれ」と読みますし、漢字の異なる「こそあど」、文字にしていないそれらもありますので、よろしければ探してみて下さいねv
2006.8.31
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