人差し指を跳ね上げて、
雷堂は打ち終わった報告書をタイプライターから外した。
軽く息を吐き、柔らかく差し込んできた陽の光に、おやと思う。
いつの間にか雨は上がっていたらしい。
雷堂は立ち上がり、窓を開ける。
涼風と、清められた透明な町に、目を細めた。
こんなに穏やかな日は、久しくなかった。
のんびり過ぎていく時間を楽しむ余裕など、かつての自分にはなかったことだ。
そう感じる自分を戒めてもいた。
隙を見せるな。常に冷徹で、何かに心を奪われることなかれ。
感情など、あっても邪魔なだけ・・・・・・。
氷のような意識に、だが、いつからか不快な音が混じり始めた。
こんこん、と扉を叩くような軽い音。
こちらを破砕しかねんばかりの、轟音。
春を招き、降り積もった雪を溶かすような清い音。
・・・・・・いつからだろうか。それらの音が心地よく思えだしたのは。
通りを眺めていた雷堂は、ふと我に返る。
今、探偵社にいるのは雷堂だけだ。
何かと用事を云ってくる某や、雷堂を見る度にほくそ笑む書生、敬愛すべき翠玉も、出払っている。
萎えた精神を叱咤する自分もいないでもないが。
こんな日も悪くない。
雷堂は椅子に座り、ゆったりと脚を組む。
これが平和というものだろうか・・・・・・。
冷えた肌の一点を、灼熱が襲った。
雷堂は、逃れるように身じろぎした。
・・・・・・どうやら、我は寝ていたらしい。
ゆっくりと目を開けると、弓月の校章が目に飛び込んできて。
「ライ、ドウ・・・・・・?」
まだぼんやりする頭で呼べば、音を立てて首を吸われる。
その熱さにびくりとはねた身体を見て、何か云われたような気がした。
「・・・・・・ライドウ」
今度は、啄むように唇を吸われた。
まるで猫に懐かれているようなくすぐったさに、眠気も手伝って、ゆるりと舌を絡ませる。
水音に、息が上がってくる。
だが、どこか夢現で、雷堂は壁に背を押しつけられても抵抗しなかった。
「貴方は・・・・・・」
雷堂のシャツの下から手を這わし、書生が笑む。
「可愛い人ですね」
「・・・・・・っ」
胸の飾りに触れられ、雷堂は息を呑む。
普段なら性急に求め合う掌の、打って変わって優しい愛撫に、いつもより感じてしまう。未知の快楽に期待と恐怖で叫びたくなる。
早くしてくれ、と云ったかもしれない。
勿論、それを快諾するライドウではない。
殊更ゆっくり丁寧に、耳を舐め一々音を立てて雷堂を追い上げていく。
「・・・・・・くっ・・・・・・あっ」
立っていられなくなり、雷堂は縋るようにライドウの学生服を掴む。
ライドウは、そのまま開けっ放しの窓に雷堂を凭れさせる。
「自分でしてみて下さい」
「な、に・・・・・・」
雷堂の掌を、異なる白い手が握り込み、導く。
形を変えているそこに、雷堂は更に紅くなったが、強く揉まれて呻くとともに、ジッパーを下ろすのももどかしく取り出した。
浮かされたように動かすと、ライドウが、ぐいぐいと体重をかけてくる。
窓から落ちそうになり、雷堂は視線をきつくしたが、微笑みだけしか返らない。
ぴたりと身体をくっつけたライドウは、荒く息を吐く雷堂の首筋に顔を埋め、戯れのようなキスをする。
雷堂も、お返しとばかり首に紅い印を刻み、ライドウの秘所を探り、空いた手を下げていく。
「僕達のしてること、誰かが見ているかもしれませんね」
町の喧噪が大きくなったような気がして、ぐん、と互いが高まる。
「昼間から、学校にも行かずに、ね」
くすくすと笑うライドウの吐息が、性感を撫でる。
「変態が」
「貴方も」
唇を合わせ、貪る。
二人の物も合わさり、暴れ狂う振動を四つの手で捕まえた。
掌から零れる蜜は堰き止められず、勢いを増すばかりだ。
滅茶苦茶に擦り上げ、後少し、というところで・・・・・・。
「……ていうか青少年、おまえら何してんの?」
雷堂は、硬直して事務所の入り口を見やる。
そこには生ぬるい視線が……。
「・・・・・鳴海・・・・・・あぁっ!」
先端を強く擦られ、雷堂は服を濡らした。
鳴海と視線を合わせたまま瞬間を見られてしまい、雷堂はぽろりと泪を零す。
屈辱なのか、恥ずかしさなのか、それとも、認めたくはないが見られたことへの歓喜なのか。
鳴海への気持ちを掴みきれず、雷堂は荒く息を吐く。
窓の桟に手をついた瞬間、熱い飛沫が雷堂の顔にかかった。
呆然として、口にまで入った粘液の出所を追うと、傷のない己の顔がニヤリと笑った。
眉間に皺を寄せて近づいてくる上司に、ふっと笑いかけ、ライドウは部屋を後にする。
「雷堂」
「・・・・・・な、何だ」
去り際に、ライドウが一言残していく。
「貴方、無防備すぎますよ」
呆然とする雷堂は、反論しようとして、鬼のような形相の鳴海に沈黙する。
「雷堂ちゃん」
「・・・・・・何だ」
上から覗き込んできた鳴海が、雷堂の顔に付着した白濁を、指先で、ぴんと弾く。
「お前、自分が誰のものかわかっていないようだね」
「は・・・・・・?」
殺意さえ滲ませた男の瞳に、今度は優しい光が灯る。
まるで猫をいたぶるような・・・・・・。
「雷堂。今日は用事ないよね」
あっても否とは云わせない口調である。
「まだ昼だし。今日は、たっぷり話し合おっか」
ぞくっと言いしれぬ恐怖と快感が、雷堂を貫く。
荒々しく手首を掴まれ、ベッドの上で朝まで散々いいように喘がされた雷堂は、黒猫の鳴き声に、重い身体を引きずり起こす。
矢張り平和な日などないと、唇を噛みしめたのだった。
雷ライで。いちゃいちゃでも無理やりでもどっちが誘ってもどっちが強引でもいいんですが、ちゅうとか身体のまさぐりっことかまあこれもどっちでもいいんですが、そういうことしてるときに、鳴海さんが帰ってきちゃって、
「……ていうか青少年、おまえら何してんの?」と生ぬるい視線を受ける……。
上記がリクの内容でした。
が、終わってみれば、これライ雷で雷様総受じゃん!?(墓穴)
いやあの、雷様も頑張ったんですよ!? ライ様のお尻を狙ってたんですよー!
でも、ライ様の鬼畜っぷりには叶いませんでしたー!
すみません、「リクと違うやん」というお声が今から聞こえるようです。(そりゃそうだ)
でも、なんしか雷様の受くさいところに、すごく萌えたよ・・・・・・。雷様ったら皆から遊ばれて愛されて・・・・・・アイドル♪
しかも鳴雷な余韻。この鳴海さんは、雷堂さん家の鳴海さんです(笑)
この鳴海さんは、雷堂を独占したい気持ちがあるので、ライドウを少し敵対視してます。ライドウさんは、軽く流して今日も雷堂さんをからかいゴウトにゃんを追い回してます(笑)
あれ? やっぱりライ雷・・・・・・。
しなべさん、本当にすみませぇん! あの返品はいつでも受け付けますので!
ここまで読んで下さって面目なく、でもありがとうございました!
2006.7.19
|