恋をした。
派手ではないが、幸福だった。
幸せになりたかった。
ただ、それだけだった。
大きな家を買いたいとか。
いい車に乗りたいとか。
大金持ちになりたいとか。
そんな大それたものでなくていい。
ただ、自分の座る場所があって。
隣に座ってくれる人がいて。
手を握るだけでよかった。
当たり前の。
鼻で笑われそうな。
ささやかすぎる願い。
その為ならば、自尊心も命運すら他人に譲り渡したというのに。
どうしてそれがいつも叶わない?
自分の努力が足りないのか?
捧げるものが足りないのか?
そっと愛しい頬に触れて、亡骸の目を覆った。
この苛立ちを何で解消すればいい?
絶望と喜劇のような此の悲劇を、どうすればいい?
誰を憎めばいい?
自分を憎めばいい?
世界を憎めばいい?
いっそ、いなくなればいい?
それとも、幸せなんてもの、期待しない方が幸せなのか・・・・・・?
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何を考えている?
問われて、目を開ける。
振り向けば、額同士が軽くぶつかった。
笑顔をつくるのだが、遠い記憶が足を引っ張り、どうしても躰の奥底の強ばりはとれない。
そもそも人として当然感じるべき感情の波が、冷え切っているというか。
癖のある髪をかきあげた。
いや、逆だ。
感情は沸き起こる。
ただ、その容れ物が冷たいだけだ。
だから、どうやっても温かくならない。
躰は接近するのだが、心が一歩後ろへ退いてしまう。
結局、誰も愛してはいない。
愛したこともない。
酔うことはあっても、愛じゃない。
あの時だって・・・・・・。
「あーもー考えるの面倒くさい。お前、考えて」
「何の噺だ」
「察しろよ。適当に。ほんと俺、お前、嫌い」
「嫌いは好きに転ずるらしい」
「ないない」
「無視しないということは、関心がある証拠だ」
「ちっ。いらん知識を」
「いい加減、腰に回した手を解いてくれ」
「嫌。だって寒いし」
「今日は暑いくらいだが・・・・・・」
「寒いの」
徹夜明けで勝手に他人の布団に潜って、寒い寒いと、狡く擦り寄る。
人肌が恋しい時だってあるだろ。
人肌に恋。
あ。
これも一つの恋愛?
ーーー何だか疲れた。
今は、傷つきたくない。
傷をつけたくない。
だから、今日は、もう、此処で眠ってしまおう。
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人物の名前を出さないのが、マイブームらしく。
読みにくくて申し訳ない!
ほんのり鬱っぽい話よのぉ。
でも、ちょっとラブ?
ま、何処かの所長と何処かのお相手の話でしたとさ。
2007.3.03
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