そっと鳴海の腕から抜け出し、ライドウは風呂へ向かった。
蹌踉めいた拍子に、内股が滑り、慌ててくしゃくしゃになった浴衣を羽織った。
瞼が腫れて、視界が霞む。
何とか辿り着いて気だるい腕を伸ばす。
コックを捻る音が厭に大きくて。
濡れていく浴衣が、張り付いて。
先の情事を思い出して、身体が跳ねた。
あえかな溜息は、冷水に融けていく。
ぼんやりと足元を眺めると、渦に、二人分の白が混じりだし、かぁっと頬が染まった。
鳴海さん、の、を掻き出さなければ・・・・・・。
おずおずと、背中から腕を回し、窄みに
「・・・・・・あっ」
たまらず壁に手をついた。
蕾、が。
指と快楽を呑み込んでいた蕾、が。
浅ましく反応したのだ。
荒い息を吐き、少年はまた渦を見た。
思えば、自分で処理するのは初めてだった。
いつもなら鳴海が、寝ている間にしてくれていたから。
・・・・・・こんなに恥ずかしいことを、鳴海さんにさせていたのか。
もう一度、そこに触れようとして少年は、指をも震わせた。
・・・・・・僕には、できない。
どうしようどうしよう。
名残惜しく収縮を繰り返す奥を持てあまして、ライドウはまた泣きそうになった。
俯くと、不意の刺激に、あっと声が漏れた。
「ん〜おはよう」
切羽詰まったライドウの声に、呆けた声が重なる。
「な、っ・・・で」
「お前が着てるの、俺の浴衣なんだよね」
「あっ」
「返してもらおうと思って来たんだけど」
こんなに濡らして、と。
一々ねちっこい手つきで、鳴海は脱がせた。
狭い浴槽では、ライドウが逃げられないことを見越して。
細い肩に顎を乗せることで、念入りにそこに縫い止める。
湿った布が、肌を吸い、引っ張るようにして離れていく。
疼く躰を叱咤して、ライドウは悲鳴を噛み殺したのに。
「何で入ってくるんですかぁ・・・あぁっ!」
また、背後から胸の飾りに爪を立てられ、ぐりっと捻られ、呆気なく声が出た。
「だってねぇ・・・・・・風呂の中であんなに色っぽい声を出されちゃ、入らないわけにはいかないでしょ」
鳴海は、にやりと笑い、
「ベッドまで聞こえてたぜ」
真っ赤になる耳を嘗めた。
「隣の部屋に聞こえるって言ったよね」
「っ、すみませ」
「謝るのは、後」
鳴海はライドウの奥が閉じないように、股の間に脚を差し入れる。
指を絡ませ。
強く合わせた腰ごと壁に押しつけて。
「俺に任せて」
少年は、男の双眸に吸い込まれたような気がした。
渦のようだった。
足下の渦は、雫を吸い込むだけだが、この渦は違う。
戸惑いのうわずみ液を呑み込み、毒を混ぜて逆流する。
泥に塗れた紅い獣を曝く、その毒を。
膨らんだライドウには構わず、鳴海は親指、人差し指、中指で蕾をかぱぁっと開く。
空いていた右手は、ノズルを掴み。そこへ押しつけて。
一気に、湯を出した。
「嗚呼っ! やぁっ!」
熱い飛沫を内部に叩きつけられて、ライドウは悲鳴を上げて暴れた。
ぎりぎりと爪をたてられ、鳴海は目を細めたが、更に栓を捻った。
「ふああぁああっ」
密室に反響する悲鳴が、やがて弱々しくなり、睦言のように甘くなっていった。
代わりに限界を近づけるのは、細く艶めかしい腰。
かたかたと震えるくびれを、ぱしんと鳴海は叩き、ライドウを堰き止める。
忙しない桃色の唇に、鳴海は粘つく指を突っ込んだ。
「美味しい?」
「・・・・・・っ」
「俺とお前の味」
ひんっと啼く少年に、鳴海は唇を歪める。
「ねぇ。たまには、お前、して見せろよ」
+
喘ぎと水音が、響く。
キュッキュッと、壁にこすれる白い背は、今にも崩れ落ちそうだ。
「ふーん。お前、そんな愛撫でいけるんだ」
やわやわと自身を握っていたライドウは、潤んだ瞳を逸らそうとして目を見開いた。
「やり直し」
顔に冷水を浴びせられ、竦んだライドウは、焦って速く動かす。
「嬲る場所が足りないでしょ」
鳴海は、足の指でぐりっとそこを押した。
「お前、ここ無しでいけるわけ?」
「・・・・・・でもっ」
「やれよ」
「さっ、き、やろうとして、できなかったんです!」
「ふぅん、じゃあいけないまま外歩くの?」
風呂の淵に腰掛けて、鳴海はゆったりと脚を組んだ。
「やらしい子」
「そん、な」
「じゃあ・・・・・・やらないとね?」
俺が見ててあげるから。
優しく細められた双眸が、少年を見つめる。
その瞬間、ふわっと何かが絡まったような気がした。
「・・・・・・やれるね?」
「・・・・・・はい」
少年の手から、焦りはなくなっていた。
むしろ、そこに触りたくてたまらない衝動が生まれる。
これは鳴海の手なのだ。
だから、そこに触れることができ、躊躇いなく腰を振れる。
いや、振らされる。
鳴海が見てくれているから、触れられる箇所。
鳴海なしでは、快楽さえも無意味になった本能。
熱くなった身体ごと前は膨らみ、だが弾けることはなく、のぼせるだけ。
一人では、もう、満たされない。
「鳴海さん」
ぶつかったのは、傲慢な瞳。
「鳴海、さん」
ライドウは自分も同じ瞳をしていることを、知っていた。
「お前が誰のものか、わかった?」
立ったまま繋がり合った。
何度も互いの名を呼び合った。
だが、溶け合い一つになった身体には、それは無意味だった。
蕩けた欲望は、心臓に膜を作り、呼ぶ声を脈に変えて反響させる。
鳴海はライドウであり、ライドウは鳴海になり、渦になる。
白く、濃い、渦に。
+
二人分の飛沫を流しながら、鳴海はひくつく躰を愛しげに撫でる。
「今日はね。お前が探偵社(うち)に来てから一年目なんだよ」
だから、ね。
優しさで包んでいた「好き」は、昨日で終わり。
「これからは、アイしてあげる」
ハードコアにね。
+ + +
い、いかがだったでしょうか。
す、みません! 江支さんのえろすぎる文でヒートアップした皆様を、萎えさせてしまいましたぁ!
しかも事前に、
梶浦「立ちエロと、一人でさせるのどっちがいいですか」
江支さん「立ちエロで!」
梶浦「了解★」
書いてみれば、混合シチュエーションですがな。立ちエロの方が描写が少ないですがな。
いつもの如くあんまりえろくないし! すっみません!
ところで鳴海さんの最後の台詞&締めは、裏事情がありますの。ホホホ。
この共同作品は、さわりをホテルで書き、本番をカラオケ屋で書いたんですが、
えろボルテージを上げる為に、えろい歌を歌おうということになり・・・・・・
皆様、福山雅●の「Gang★」という歌をご存知でしょうか?
ま、ぶっちゃけコンセプトはSMv なんですけど、これがえろ格好いい曲でして。
歌詞に出てくる「ハードコア」に、二人とも大 は ま り♪
合い言葉はハードコアだ! というモットーのもと、「おちもこれでいいんじゃないっすか?」
と梶浦が暴言(笑)を吐き、書いちゃったのでありまーす!
内容はSMではありませんが、だからちょっと意地悪? な鳴海さんになっています。
えろギャング★
これからは、江支さんのこともエロGang★と呼びましょう(笑)
江支さん、本当に素敵な逢い引きと萌え作文をありがとうございました!
そして読んで下さった皆様、本当にありがとうございました!
そんなあなたもエロGang★
2006.8.27
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