此処に置いておくおからね

―――無視をしたのに、隣人の唇は止まらない。

お前に護って欲しいんだ 此の箱

・・・・・・知らぬ。管轄外だ。
・・・・・・何故、そこで笑う。

前 膨らんでるぜ

・・・・・・っ!

触っちゃ駄目 あ 箱の事だよ 少年

―――頬が赤く染まるのを抑えきれない。

中を見ても駄目 中身を想像するのはいいよ


大事な物が入っているから


―――誘い文句のように其の言葉が甘かった。



結局箱は、応接室に置かれた。
漆に金粉を散らした豪華な重箱。
塗りの新しさから江戸期以降の物と推測できる。
だが、其処までしかわからない。
日差しと人の手を避けるように位置する其れは、それでも時折現れる依頼主の好奇の視線を吸い寄せる。
気まぐれに、きらりきらりと光る様は、蝶々の羽ばたきのようでもあり鱗粉のようでもある。

護ってね

触るなと云われた手前掃除するこもできないから、簡単な呪いを施した。
主以外が触れば、厄災がふりかかる呪いを。

大事な物が入っているから

本当だろうか。鳴海お得意の嘘のような気がする。

「鳴海君、彼の箱を譲ってくれんかね」
「申し訳ありません・・・・・・」

大切な物なんですよ

お偉方の好事家にも此の態度。
「益々欲しくなるよ、君」
「今夜、席を設けましたから」

それでご勘弁を。
中年紳士の分厚い頬と腹が揺れた。




「やらせろ」
脳が理解する前に、雷堂は壁に押さえつけられていた。
「やめろ……っ!」
身じろぎした瞬間、するっと下衣が床に落ちる。
いや、落とされた。
いつの間に・・・・・・!
早急に前を扱かれて、雷堂は悲鳴を押し殺した。
目前は壁。背後からは、荒い吐息ともう一度、下衣の下がる音。
糞っ!
窄みに擦りつけられる熱に躰の震えが止まらない。
「今夜さぁ。俺、抱かれるかもしれないんだよねぇ」
制服の上から乳首を嬲る莫迦に、膝が阿呆のように笑う。
「さっき箱を欲しがってた豚野郎がいただろ。彼奴だよ彼奴。彼奴に突っ込まれるんだよ」
非常識に頭を真っ白にされた瞬間、太腿をかつがれ、入れられた。
「豚野郎に突っ込まれる俺に、掻き回されて喘がされてさ。どんな気持ち?」
「黙れ・・・・・・!」
太腿を掴む手を押し返そうとして、自身を触らされた。
「・・・・・・っ、あっ・・・・・・」
だらしなく濡れている其処を、壁に擦りつけられ、思わず叫んだ。
「気持ちいい? 雷堂君」
「云う、なっ・・・・・・あああぁあああ!」
君付けで呼ばないでくれ。
消えた筈の男を彷彿とさせるから。
もう一度扉を開いたら。濁った眼で見られたら。もし、後ろに回られたら。
想像が止まらない。
肥え太った知らない男に突かれる此の男が、そのまま雷堂を嬲っている。
三人で淫行にふけっているような衝動に襲われて、雷堂は啼いて泣いた。

「嗚呼、そうだ。お前、箱にしかけをしたんだったねぇ」
繋がったままぐっと白い躰を持ち上げて、鳴海は歩く。
振動が伝わり、あられもない声と唾液が漏れる。
もう許してくれ、と呟いた気もする。
返ってくるのは、より強くて深い衝撃だけだったが。

「主以外が触れたら、厄災がふりかかるんだっけ?」
赤ん坊を抱えるようにして、鳴海は雷堂をその箱に近づけていく。
「なぁ、お前の前だけ箱に触れたらどうなるんだ?」
「なっ・・・・・・!」
さぁっと血の気が引いた。
想定外だ。
まさか。いや、そのような事はいくらなんでもしないだろう。
縋るように見たかもしれない。
鳴海は、それはそれは楽しげに笑っていた。
「やっていい?」
「やっ・・・・・・あぁっ」
暴発しそうな所を堰き止められて、ぴくぴくとあられもない場所がひくつく。
「んじゃ、堪え性のない雷堂君の為に、精液だけね」
「あぁあああああっ!」

真珠か白金ってとこかな。
悪趣味な主は、箱から白い雷堂を掬って、少年に舐めさせた。

 
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      2007.7.30